パフォーマンスの哲学

アイディアに振り回される身体。観客は「機械」に何度も感動はしない。

これからの時代、技術だけでは生き残れないのかもしれない。

斬新なアイディアや演出が無ければ、
いくら熟練の技術を持とうとも、
埋もれていく運命にあるのだろうか??

 

Staged Moon Night

少しネタが古いけど、ダンス界がこのところ演出ブームのようだ。
映像を組み合わせたりLEDを使って光の効果を利用したり、
これまでに無かった「機械との融合」が一気に注目された。

 

 

2個目のはCMでもやってたよね。
どっちも日本人が発案したものらしく、
海外でもすごい勢いでパクられてるとか(笑)

演出で際立つ『没個人』

日本人がこうして海外で脚光を浴びるのはうれしい反面、
結局、演出やアイディアの勝負なのかな?って寂しい思いになった。

演出で観客を引きつけるってすごいと思う。
ダンスに限らずコンサートとか舞台では無くてはならない。
『テクノロジー』との融合とかってヤツ。

 

でもね、、、
どうしても「人間」が二の次になってる気がするんだよね

例にあげたダンサーたちは、
きっとダンスそのものも上手なんだと思う。
あまりダンスは詳しくないので分からないけど、
Kagemuの人はダンス界でも有名らしい。

けど、

この演技をするのって彼らじゃなくても良いよね?

LEDダンスは顔の表情どころか性別も分からない。
Kagemuの人は男性ってのはわかるけど、
ダンスがある程度上手くて、映像とのリンクを出来る人なら誰でもいいはず。

可愛いアイドルとかがやっても良いよね。
って、そういやももクロがやってるか。

『人』を見るのか、『テクノロジー』を見るのか

ももクロのライブを例に挙げたけど、
当然のことながらこの場合は観客は「ももクロ」を見に来てるはず。
ファンの人が殆どなんじゃないかな。

でもたとえば、
『映像とのコラボレーションした新次元ダンスショー!!』
とかって銘打った舞台だったらろうだろう?
どこの誰かも分からないダンサーでも、
おそらく演出の斬新さをめがけて観客が集まるんじゃないかな。

 

反対に、
『○●の演出で有名な○●というダンスチーム!!』
みたいな売り方だってされていくと思う。
だって演出の方が有名で先に知っちゃうんだもん。

ためしに、果たしてどれだけの人がLEDダンスをやってるダンスチームの名前を言えるだろうか??

(※)正解はWrecking Orchestra

 

こうなってくると、
もはや演出目当てで舞台を見に行ってる感じがする。

 

派手さや話題性に踊らされる

ここから先は勝手な意見として読んでいただきたい。
舞台やステージに演出やアイディアにばかり傾斜していくと、
最終的には「技術も基礎も無い素人」が氾濫すると思う。

素人が数か月のリハーサルで振付を覚えて、
演出効果に合わせて動く練習をする。
あとは壮大な装置を持ってして、
それっぽいステージに創り上げてしまう。

こうなったら末期症状。
派手さや話題性に踊らされるだけだ。

 

広告は「次世代の○●」みたいな謳い文句、
演出の派手さや斬新さ、アイディアを売りにしている。
いざふたを開けてみれば、
動いているのは寄せ集められた素人同然の集団。

あなたはこのステージに安くないチケット代を払うことになる。

 

人は人に感動する、そうあってほしい(願望)

人は、生身の人間が「目の前で動く姿」に感動する。
いやそうあってほしい。
素晴らしい演出で観客が感動するのもわかる。
でもあくまで人間が主役であってほしい。

 

技を磨くのは人間の特権だ。
しかもいくら熟練したとしても「時に失敗するかもしれない」という脆さがある。
だからこそ「生身の人間」にしかできない。

 

声、手足の動き、息遣い。

観客は目の前の「人間」が動くのを見ながら無意識のうちに、
背景にある脆さと不安、これらに打ち勝つ心を感じ取る。

派手な電飾や映像の演出も良いけど、
もう少し『人間臭さ』に戻ってきてほしい。

 

演技と演出 (講談社現代新書)

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