インタビュー:「ショーと怪我、長期休養アーティストの苦悩と想い」

2013年の10月中旬のある日、シルクドソレイユのラ・ヌーバに出演中の粕尾将一が長期休養に入ることになった。休養の理由は両膝の怪我によるドクターストップ。5年間のラ・ヌーバ出演のなかで最も長期間の休養になる見通しだ。

 

身体が資本のアーティスト、怪我次第では直接引退へと繋がる。休養に入ったばかりのアーティストがどのような想いで日々を過ごしているか、その日常と胸の内を聞いてきた。

 

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Q.アウトすることになった経緯を教えて下さい。

今年の3月頃、両膝に違和感が出始めたのがキッカケでした。ちょうどダブルダッチがラ・ヌーバに入った頃です。

 

おそらく演技で慣れない動きを繰り返したのが引き金になったのだと思います。やはり新しいことはリスクが伴うものなんです。自分でも気をつけていたけど、しばらくしてから両膝と両足アキレス腱の痛みに悩まされるようになりました。

 

そして痛みは引いては戻るを繰り返し、ついに2014年の10月中旬には歩くのも痛いほどの激痛になってしまった。バックステージで足を引きずりながら歩いてる姿を見たフィジオ*1が見かねて、「もうアウトだね。」と話しかけてきました。

 

Q.怪我の具体的な症状を教えて下さい

両膝のお皿の下に痛みがあります。いわゆる「ジャンパー膝」というやつです。硬い地面でジャンプ動作を繰り返した結果、靭帯と骨のくっついてる場所が炎症を起こしてしまいました。

 

Q.手術はしますか?

幸いにも今回は手術はしなくて済みました。けどお医者さんから「これ以上炎症がひどくなってたら靭帯が切れてたかもしれない」と脅かされた時は冷や汗でしたね。そうなったら手術は避けられませんから・・・。

 

Q.治療にはどのぐらい掛かるんですか

フィジオと医者の話し合いで、8-10週間だと聞かされています。でもあくまで目安の期間なので、怪我の回復具合によってはもう少し長引くかもしれません。

 

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Q.治療期間中は何をして過ごしているんですか?

ショーには出れませんが毎日シアターに通っています。まずは怪我の治療が優先。フィジオで電気治療器や超音波治療器などを使って炎症を抑える治療をしています。

 

また同時に、復帰した時に万全でステージに立つための補強運動や再発防止のためのエクササイズをしています。痛みが出ない範囲で自転車を漕いだり、ゴムバンドで足を動かしたり。。。復帰してすぐまた怪我をしてしまったら意味が無いですからね。

 

Q.アウトしている間は誰がショーに出ているんですか?

もう少しで代役のアーティストが来てくれる予定です。今回の怪我のように治療に1ヶ月以上必要なときは、同じ演目が出来る代役の人を探して、治療中はその人がなわとびアクトをしてくれます。

 

ただ、今はまだ代役の人が来ていないため相方のnasaがソロで頑張ってくれています。ただでさえキツいアクトなのに、ソロを長期間任せてしまって申し訳ない気持ちです。代役の人が来てくれるまでの間、彼の身体が大丈夫か心配です。

 

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Q.左肩、半月板と怪我が増えていますが、今後に不安はありませんか?

正直不安はあります。年齢的に身体が衰えてくる時期に入ってきましたし、高校生・大学生の時のようには跳べなくなってきました。もう10年以上も跳び続けてきてるのだし、そりゃ身体にガタが来てもおかしくないかなぁ…って。

 

でもそれは仕方ないことです。今回の怪我もそうですが、決して油断をしたり手を抜いて起こった怪我ではありません。練習をして、筋トレをして、ストレッチや柔軟をして、ショーに出演して…自分ができる事は全てやってきました。けど、結果として怪我をしてしまった。

 

だからもう、潔く受け入れるしかありません。今は治療に専念して、次にステージに復帰した時に万全の演技をすることだけを考えています。

 

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Q.このお仕事は身体が資本と思いますが、怪我と引退をどのようにお考えですか?

もちろんあります。過去にも怪我が原因で引退したアーティストは何人も見てきました。いつの日か、自分が納得できるモノが提供できなくなった時はキッパリとステージを降りようと思っています。その引き金が怪我かもしれません。

 

でも怪我をしていなくても、自分が思い描いた演技ができなくなったらステージに立ちたくありません。

 

だって、自らが納得出来ない演技なんて、お客様が見て納得できるとは思えないんです。仮に他の人が引き止めてくれたとしても、もう自分自身ステージに立つことが苦痛でしかなくなっちゃう。だったら若手にポジションを譲って、自分は他にワクワクすることを事をやる。

 

自分勝手なんですけど、最後の1回までステージに立ってる「粕尾将一」はカッコつけていたいんです。

 

Q.これからの事を聞かせてください

まずは怪我の治療に専念です。まだステージに立てる自信はありますからね。

 

そしてこの機会に体のケアについてもう一度じっくり勉強しようと思います。もしかして自分に知識がもっとあれば今回の怪我を避けられたかもしれないって、どうしても思っちゃいますからね。だったら次に同じ過ちを繰り返さないよう、今から本腰を入れて勉強しておこうと思うんです。

 

あと、ショーと全然関係ないなことに挑戦したいですね。いつもはショーが最優先になってしまう。でも今は時間が空いてるし、ショーだけに意識を集中しなくてもいい。負担をかけているnasaや他のアーティストには申し訳ないですが、このチャンスを活かして普段はなかなか触れられない世界に挑戦してみようと思っています。

 

- Q.最後に一言

この怪我はきっと、一度立ち止まってゆっくり考えろ!!ってことなんだと思います。
ラ・ヌーバを見に来てくれるお客さんに演技が見せられないのは残念です。でも怪我してしまった事実は変えられないので、この特別な時間をポジティブに捉えたいです。

 

10週間なんて、ボーっとしてたらあっという間に過ぎちゃいますからね。復帰できるまでの時間に何が出来るか、焦らず探っていこうと思います。

 

(※)全て事実です

*1:シルクドゥソレイユ専属のトレーナー

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この記事を書いてる人


縄跳びパフォーマー 縄のまっちゃん
 ※本名:粕尾将一(カスオショウイチ)

全国の学校やイベントで縄跳びをつかったパフォーマンスや出張なわとび教室を行い、子ども達に運動の楽しさを伝え笑顔を引き出す仕事をしています。

【略歴】
全日本チャンピオン、アジアチャンピオン、世界大会6位。2010年よりシルク・ドゥ・ソレイユ常設ショー「La Nouba」に6年間約2500回の長期出演を果たす。