安定を目標にしてはいけない。ピクサー流に学ぶ変化と不確実性への適応。

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photo by pascalbovet.com

本番でミスをした時ほど、逃げ出したい瞬間はありません。

1000人を超える観客からの冷たい視線、漏れ聞こえるため息。押し潰されそうな空気に卒倒しそうになります。縄跳びは特にミスが目立ちやすい演目。少しロープが接触しただけで演技が中断してしまい、誰が見ても「あ、ミスったな」とバレてしまいます。

とはいえ、5年もステージに立っていると切り替えが上手になります。落ち込む気持ちを引きづらずに次のショーに臨めるのも、回数と経験があってのこと。

ですが、実はこれ以外にもミスをしたくない大きな理由があるんです。

- 見えにくいミスの原因

ミスをしても、例えば自分一人の失敗なら話は簡単です。気持ちを立て直し、次のショーで繰り返さないように練習する。自分自身の問題なので、納得行くまで何度でも練習できます。

ところが複数のアーティストが絡むミスだと話が変わってきます。関わっている人数が多いほど問題が複雑になっていくんです。

演技中、誰かがロープに引っかかったとします。単に引っかかったアーティストが修正すれば良いように思えますが、問題はそんな単純じゃない。回している人や一緒に跳ぶ人、引いては周囲に居るあらゆる人が影響しあってミスが生まれるんです。

演技中に並んでジャンプをする場面があります。一人ならリズムが崩れることはありません。しかし隣にリズム音痴が居ると、たちまち影響されてリズムを失います。リズム音痴本人に悪気はありません。ですが、こうした見えにくい原因がミスを生むのです。

- ミス原因が分かったら解決、ではない

見えにくい原因を突き止めたとしても、話は簡単に進みません。手間の掛かるコミュニケーションを乗り越える必要があるんです。

上記のリズム音痴の場合、本人に悪気もないし問題にすら気付いていません。修正の指摘を受けるなんて寝耳に水。表面的には聞き入れたように見えても、多少なりの反発は割けられません。まぁ人によってはマシンガントークで弾き返してくることも…。

改善点をズバリ指摘されて気分のいい人は居ません。反発したくなる気持ちも痛いほど分かるんです。指摘をすれば嫌われるかもしれない。出来ることなら指摘せずとも自然に改善して欲しい。

このようなコミュニケーションには、一歩踏み出すエネルギーが必要です。だからこそ、ミスしたくないんです。

- 一歩踏み出すエネルギーの目減り

しかしミスを防ぐことばかりに意識を注ぐと、一歩踏み出すエネルギーが知らぬ間に衰えていきます。

筋肉と同じで、一歩踏み出すエネルギーも定期的に発揮しておかないとダメなんですよね。自分では同じ水準を保っているつもりが、使わなかった期間だけ着実に低下していくのです。

またエネルギーが低下すると使い惜しみします。エネルギーを使うのは疲れるし面倒くさい。だったら避けられる方法はないか?という方向に知恵を働かせます。ここまで行くとエネルギーは飛躍的に目減りしていくことでしょう。

変化と不確実性は、人生につきものだ。それらを拒むのではなく、予想外の出来事が起こったときに回復できる力を養うことが必要である。

出典:ピクサー流 創造するちから―小さな可能性から、大きな価値を生み出す方法

予想外の出来事が起きた時、エネルギーを目減りさせた人は傍観します。自身への実害や変化の波が押し寄せてこない限り、事なかれ主義を通そうとするのです。

- 「安定の日々」に潜む落とし穴

安定した日々は心地よいものです。しかし何もない平穏な日々こそ、エネルギーを削いでいく一番の要因。一歩踏み出すエネルギーは知らぬ間に目減りします。

まちがっても安定を目標にしてはならない。安定よりもバランスのほうが重要である。

出典:ピクサー流 創造するちから―小さな可能性から、大きな価値を生み出す方法

ミスを防げば、ミスに対処する必要がなくなるという幻想に陥ってはならない。実際には、ミスを防ぐためのコストのほうがミスに対処するコストよりはるかに高くつく場合が多い。

出典:ピクサー流 創造するちから―小さな可能性から、大きな価値を生み出す方法

特段変化のない平穏な日常が続いている人は要注意です。気付かぬうちに事なかれ主義に流され、エネルギーを目減りさせているかもしれません。

一度目減りしたエネルギーを回復させるのは大変。それはコミュニケーションに限ったことでありません。心当たりのある人は、「億劫だな…」「面倒くさいなぁ…」と思うことを振り返ってみてください。

ショーで複雑なミスが起きた時、最初は自分も事なかれ主義で傍観していました。しかしこうして一時的に逃れることを繰り返していたら、本当に必要なコミュニケーションまで億劫になってしまいました。エネルギーが枯渇してしまったのです。

傍観し上手く立ち回るのも良いでしょう。でもたまには正面から億劫にぶつかる訓練をしたいもの。ちょっとした積み重ねがエネルギーの目減りを食い止めてくれるはずです。

ピクサー流 創造するちから

ピクサー流 創造するちから