「記録」より「記憶」なのか。あなたはスポーツに何を見ていますか?

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photo by Aleksandr Osipov

こんにちは!縄跳びパフォーマーの粕尾将一(@macchan8130)です。

スポーツに怪我はつきもの。自分も競技時代に前十字靭帯断裂や、シルクドソレイユに入ってからの両膝ジャンパーズニーなど、怪我に悩まされる時期がありました。

先日Facebookでこんな動画が回ってきました。アメリカの体操選手「Kerri Strug」さんの1996年アトランタ五輪での跳馬演技です。

The Olympic Games | Facebook
(※)FaceBookのページが開きます

彼女は跳馬の一回目の試技で着地に失敗し足を捻挫しました。しかし二回目の試技を辞退すれば、アメリカの金メダルは夢に終わってしまう。そこで彼女が下した決断は、片足が捻挫した状態で二回目の試技を跳ぶこと。

結果、捻挫した状態とは思えない華麗な演技を披露し、アメリカは見事に体操団体金メダルを獲得。この動画はオリンピックのFacebookページが公式に挙げている「モチベーションムービー」として世界中でシェアされています。

怪我をするのは一瞬。どれだけ注意していても、突発的なアクシデントは避けきれません。日本でもつい最近、羽生結弦選手の練習中の怪我が話題になりましたね。

ではあなたは、怪我を乗り越えたKerri Strug選手の美談をどう考えますか?

- 怪我をしても、金メダルはとれる!!

先ほど挙げた動画のキャッチコピーは「怪我をしても金メダルが取れる」です。どんな失敗をしていても、最後まで諦めずに立ち向かえばきっと結果が付いてくる。そんなイメージですね。

きっとスポーツで似た経験をした人も多いはずです。

自分も2009年のアジア大会で、フリースタイル*1の前日、足の肉離れで負傷しました。普通に歩くのもままならず、後輩にサポーターを借りたり薬を塗ったり、できる限りの処置をしてごまかしました。

しかし本番直前でも痛みは取れませんでした。心の中で引退を決めていた自分はこの試合を諦めきれず、周囲の注意を押し切って試合に望みました。

(※)その時の実際の演技

結果は僅差で総合優勝。先に挙げたKerri Strug選手と同じく、諦めなかったからこそ勝ち得た優勝でした。

- アスリート本人の心境

アスリートは試合に向け、ギリギリまで身体を追い込みます。「縄跳び」というイメージとは掛け離れた練習風景は、想像を絶します。ここに緊張感や環境の変化も重なり、本番前後で怪我をする人が増えてしまうのです。

怪我を押し切ってでも出場するのは、周りからすれば美談に聞こえるでしょう。記録が付いてくればなおさら記憶に残ります。

しかし怪我をした状態で演技をするのは大きなリスクがあります。通常時でさえ負担の大きな技を行います。怪我で身体の一部をかばって試合に望めば、怪我を悪化させたり予期せぬ怪我を重ねる危険性があるのです。

また脳震盪のような「脳の揺れ」はさらに危険。脳内出血に気付かなければ、ダイレクトに生死に関わります。

さらに、こういった状況での選手には正常な判断はほぼ不可能でしょう。一年、ないしは数年をこの一日のために捧げてきた彼らにとって、辞退するという選択肢は初めから存在しないのです。

- スポーツに美談は必要か

一方で伝える側とすれば、この手の話は美談として描きやすい。怪我や困難を乗り越え、最後まで諦めずに勝ち取った金メダル。感動を生み出すのにもってこいのテンプレートですよね。

ただここで失敗していたらどうでしょうか。怪我を押して演技をしたのに、怪我を悪化させただけで不甲斐ない成績に終わった。それでも少しは逸話になり得るかもしれません。でもやっぱり美談には「困難を乗り越えた成功」が必要です。

スポーツではしばしば「記録より記憶に残る」という表現が使われます。感情を揺さぶるような人間ドラマがある方が、見ている方は応援したくなるし感動します。

向かう所敵無し、無敵の世界チャンピオンでは感動ドラマが描きにくい。周囲のプレッシャーを押しのけて!とかはいけますが、無敵の世界チャンピオンに挑戦する期待の若手の方が応援したくなるものです。

- まとめ

メディアの影響なのか、対外用に準備しているのか、最近は記録より記憶に残りたい話すアスリートが増えてきました。

脚色され一般の注目度が上がるのはスポーツにもプラスがあります。しかし「我々はスポーツに何を見ているか?」をもう一度考えることも必要ではないでしょうか。

*1:75秒以内に自由に技を組み合わせて演技をする