アクロバットパフォーマンスの限界は何歳か?

こんにちはー。
縄跳びパフォーマーの粕尾将一(@macchan8130)です。

この仕事をしているとよく、引退について心配されます。

やはり身体が資本の仕事ですからね。思うようなパフォーマンスができなくなれば、廃業する他にありません。

たとえば、プロ野球選手は約 29 歳、プロサッカ ー選手は約 26 歳(上代ら,2013)と言われています。先日50歳で引退を発表した中日の山本昌選手は、もはやレジェントなんです。

でも、シルクドソレイユで周囲を見渡すと少し感覚とズレているんですよ。うちのアーティストは35歳を超えている人が結構多くて、なかには50歳を超えている人もザラにいます。もちろんムーンサルトを平気で決めるレベルの現役バリバリです。

そこで今回は、アクロバットの年齢による限界はどこにあるのか?と考えてみたいと思います。

勝負の世界という辛さ

まずプロスポーツとアクロバットの大きな違いは、勝敗があるかどうかです。

試合で結果を出さなければ仕事が無くなります。どれほど若いころに活躍しても、年齢を重ねればいずれ競技力は衰えます。どれほど騒がれたスーパー高校球児でも、時の流れには勝てません。

この点、アクロバットの場合は目に見える競争や勝敗が少ない。オーディションで選ばれる必要はありますが、ライバル同士で勝敗を付け続けることはないのです。

また、一度習得した技術はスグには劣化しません。30代40代ならば世界トップレベルの技を維持できます。しかし勝負が避けられないプロスポーツでは、若手に体力や勢いで負けてしまう。この点、勝負ありきでないアクロバットは「技術の維持」ができれば仕事を得ることができるのです。

原因は怪我、が圧倒的に多い

一方で、アクロバットにとって怪我は死活問題です。他のスポーツ同様に怪我から復帰するこも可能ですが、アクロバットの怪我は一撃必殺が多いんですよ。中にはたった一度の怪我が原因で「再起不能」になる人もいます。つまり直接的に怪我が原因で引退を余儀なくされるケースが非常に多いのです。

そして一歩間違えれば生死に関わる大怪我をすることも。5年間ステージに立っていて、ヒヤッとした瞬間は一度や二度ではありません。

実は怪我そのものも厄介ですが、同じぐらい厄介なのが「メンタル」です。あれだけ宙返りやってるんだから、いつでもデキるってわけじゃないんですよ。

一度でも失敗すれば恐怖心が生まれます。失敗で怪我したとばれば拍車をかけて怖くなります。この恐怖心を乗り越えるのが想像以上にシンドい。身体の怪我が治っているのに、メンタル的に克服できず引退を余儀なくされるケースも少なくありません。

メンタル維持も課題

失敗せずとも、アクロバットには緊張が付きまといます。むしろ適切に緊張しなければ失敗を招きます。また1000人を超える観客の前では、ただ立つだけでも手先が震え冷や汗が出てきます。

こうした緊張を継続的に長期間続けるのは、結構なストレスになんですよね。いつも頭の片隅に「死ぬかもしれない」という恐怖を宿している。どれほど熟練のアーティストであろうと、この戦いから逃れることは出来ないのです。

毎年、シルクドソレイユの契約更新には一定期間の猶予が与えられます。別にその場でサインをしても良いんですけど、継続の意志が固まっているアーティストでも、あえて猶予期間内はサインをしないんですよ。その理由は「踏ん切り」を付けるため。このサインをしてもう一年間、このステージで戦おう!という気持ちの整理をつける。それほどステージに立つ精神的な負担は大きいんです。

まとめ

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photo by dariuszka

プロスポーツには「勝負」や「競争」がつきものです。ここで戦っているのは「ライバル」と「時間」。つまり外的要因によって引退を余儀なくされるのではないでしょうか。それは若手新星の登場だったり、ライバルとの競り負けだったり。

アクロバットはむしろ「時間経過」が味方してくれます。舞台経験を積むほどに、表現力や演技力が磨かれていきますからね。体力や勢いで劣ったとしても、若手にはない強みを推すことができるようになるのです。

一方、アクロバットが引退を余儀なくされるのは「メンタル枯渇」と「怪我」。つまり内的要因によって自ら引退へと進むケースが多いのです。

ゆえに、アクロバットでステージに立てる時間は世間で思われているより長いのだと思います。50歳になっても縄跳びしてるつもりか!?が、メンタル維持と怪我の予防次第ではリアルに可能なのです。

もしかすると「怪我との付き合い」「メンタル維持」が上手にできれば、アクロバットの限界年齢など存在しないのかもしれません。

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