なわとびパフォーマーの仕事論

制限あるところに創造力の芽が生まれる。ジャンルの強みを過信してはいけない。

こんにちはー。縄跳びパフォーマーの粕尾将一(@macchan8130)です。

自分は縄跳びの練習ををするときに必ず音楽をかけます。演技を音に合わせ意味もあるんですけど、それよりも音楽に合わせて適当に動いてるのが楽しいんですよね。

実はロープを回しながらビートに合わせて動くのって結構難しくて、慣れてこないとジタバタと音に急かされて動く感じになっちゃうんです。

慣れてくると徐々に音楽を先読みできるようになって、さらに音の雰囲気や速さに合わせた動きをチョイスできるようになる。

これってダブルダッチで言う「フリーロープ」と同じなんですよ。

フリーロープ

一定のリズムで回転しているロープの中で、ジャンパーが自由に表現をするスタイル。
今はDouble Dutch ONE’sとして全国大会も開催されている。

今回は単縄のソロバトル、フリーロープの可能性を題材に「制限があることで生まれる創造力」について書いてみます。

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単縄は音に合わせやすい?

競技種目にあるフリースタイルは、音楽に合わせて演技をします。ルール上も音楽のアクセントを利用している(=音ハメ)ができてるか?や、演技が音のビートにあっているか?といった審査項目がある。

じゃ、単縄が音楽に合わせやすいかといえば答えは「NO」なんですよ。

「前とび」だけなら簡単ですけど、二重跳びやら交差とびを入れると一気に難しくなる。三重跳びや四重跳びなんて入ったら、もはや音を聞くことは至難の業です。

実際のフリースタイルでも、そこまで音をシッカリ取れてる人は少ないですね。なんならちょっとだけアクセントでロープを止める程度。

ルール的に多回旋を多く入れる必要があり、音楽に合わせる演技はあまり現実的じゃないのです。

多回旋
一回のジャンプで二回転以上ロープを回す技の総称。
(例)二重跳び、ハヤブサ、三重跳び、六重跳び

単縄でONE’sのようなバトルをやったらどうか?

そこで面白そうだなぁと思ってるのが単縄のソロバトルなんです。

以前にもSummit of Ropesでサイファー形式のバトルがありました。でもあの場ではお題が提示されて飛び込む形式だったので、音楽を吟味して相手を見ながら跳ぶというイメージではありませんでした。

もっとダブルダッチONE’sのような、音楽を取り合うソロバトルができたら面白そうだなぁと思うのです。

音の評価基準が強くなったら何が起こるか

では実際にソロバトルでトーナメントにしたらどんなことが起こるか。まず考えられるのは三重跳び以上の多回旋が削ぎ落とされていくだと思うのです。

単縄の人は困ったときの多回旋頼りですからね。とりあえず三重跳びの連続やっとけば盛り上がりますし。

でも音楽に合わせることを意識したら、多回旋は不利な状況を強いられます。だって高いジャンプで音楽に合わせるのは非常に高度な技術ですからね。

音の評価基準が高くなれば、自然と多回旋を避ける傾向になると思うのです。

「跳ぶ」の表現が豊かになっていく

もう一つ希望的観測としては、跳ぶという動きの表現が豊かになると思うんですよね。

多回旋がきつくなれば、何とかして別の要素で戦います。ここで「前とび」に原点回帰する流れが生るのではと予想してます。前とびは誰でもできる技ゆえに、もっとも個性の広げやすい動きでもあるのです。

片足とびやグーパーとびといった足技も進化するでしょうね。足技の組み合わせを素早くとび「スピードステップ」なんて組み合わせもボンボン出てきそうです。

あとはアクロバットの考え方も若干変化していくでしょう。2016年現在はアクロバット=宙返りが主流ですが、実際にはもっと縄跳びに絡められる「動き」があるはず。たとえば「軟体xロープ」や「ブレイクダンスxロープ」あたりはスグに発展しそう。

制限から生まれる創造力の芽

ひとことでいえば、Double Dutch ONE’sは制限を加えたことでの創造力の発展だと思います。

「回す」x「跳ぶ」のコンビネーションで生まれるダブルダッチの強みをあえてロープ固定にして制限。それによって動き技も変化と深化を強いられ、新しいジャンルとして力強く広がっているのではないでしょうか。

単縄の演技はフォーマットが決まっています。多回旋やって、リリースやって、ちょこっとアクロバットを入れれば盛り上がる定石です。

でもここをあえて制限してみる。Double Dutch ONE’sと同じように強みを制限してみる。

ジャンルの強みを活かすのは必要です。しかしその強みは永遠の強みではありません。背景にある分かりやすいモノばかりに頼ってしまう弱さを忘れてはいけません。